定番!化学実験 NaClの融解塩電解
1.電解

 

(1)試薬の準備

 塩化ナトリウム(特級)16gと無水塩化カルシウム(特級)24gをよく混合する。
 
モル比で54:46で501℃で融解する1)

(2)容器のセット
  V字試験管をスタンドに取り付け、(1)の混合物を試験管に半分程度入れる。
 ガラス管にCaClが付着すると試験管の中の様子が見えにくくなる。試験管の内部に紙の筒を入れ、塩を入れるとよい。

(3)加熱融解

 バーナー3台でV字試験管を加熱し、塩を溶かす。試験管から黄色の炎色が出ない程度の炎で加熱する。この状態だと700℃くらいで加熱していることになる。
 バーナーは2台でも可能であるが、加熱が不足する部分ができると危険なので(凝固した塩が、片方の試験管をふさぎ、反対側から融解塩が吹き出す)、3台で行った方がよい。
  塩が溶けたら、さらに塩を加えて順次溶かしていく。陽極側から塩を入れるとよい。陰極から入れると陰極側のガラスに塩が付着して、生成した金属ナトリウムが見えにくくなる。
(4)試薬の乾燥
 すべての塩を溶かし終えたら、しばらく加熱して試薬中の水分を抜く。すぐに電解を行うと、陰極から多量の気泡が発生する。水素と思われるが確認できていない。
(5)電極のセット
 電極をバーナーであぶって加熱してから、試験管の中に入れる。炭素棒電極の内部に水分が付着していると、融解塩がはねて危険である。
 陰極はガラス面と接触しないように、セットする。生成した金属ナトリウムは高温では、SiOやガラスを侵す。
(6)電解
6.9V、1A程度で電気分解をする。
 NaClの分解電圧3)
 3.519V(solid)   773K
 3.019V       1273K
 CaClとNaClの分解電圧は近いのでCaも析出するが、NaClと反応してCaClになる。
Ca + 2NaCl → 2Na + CaCl

NaClの導電率(S・cm−14)
  固体 8.7×10−5    700℃
 水溶液 1.21×10−1    18℃ 10%
 融解塩 35.0×10−1    850℃
  融解塩の導電率は水溶液の30倍弱あるので、電極の面積が小さくても大きな電流が流れる。また、析出したナトリウムは空気中の酸素と反応して消費されるので、それを上回るように大きな電流で電解した。
 陽極では気泡が発生し、陰極では黒色の微粒子が発生する。しばらくすると、陰極側の融解塩に色がつきはじめる。陰極で析出したナトリウムが融解塩中に溶解して、金属霧4)という状態になり、融解塩を着色(NaCl−Naは赤褐色)する。金属霧には諸説あり、低原子価説、コロイド説、真溶液説などがある。高温になるほど金属霧が発生しやすくなり、ナトリウムが析出しにくくなる。必要以上の高温で電解を行うと、陰極に不活性気体を流しても、金属霧のためにナトリウムは析出しにくい。

(7)陽極生成物の確認  

 陽極の気体をピペットで吸いとり、水で湿らせたヨウ化カリウムデンプン紙に吹きかけると青変する。

(8)陰極生成物

 10分程度電解する。装置の周りに塩素臭が漂う。陰極側の試験管は、黒くなって中が見えなくなることが多い。
 陰極側の試験管を上からのぞくと、銀色の光沢を持つナトリウムが浮いているのが見える。
 試験管に不活性気体を流さないと析出したナトリウムは空気中の酸素と反応してしまうが、試験管の空気の出入りはあまりないので、金属ナトリウムを観察できる

陰極の引き上げ

冷却後の試験管

(9)電解後
  電解をやめ、電極を試験管から引き抜く。陰極を引き抜くと、電極に付着しているナトリウムが空気中の酸素と反応して、黄色の炎をあげて燃える。

 加熱をやめて冷えてくると試験管がひび割れる。試験管と固まった塩の間にすき間ができる。液体の金属ナトリウムがこのすき間に入り込み、陰極の試験管が銀色に見える。
 
  試験管を割り水の中に入れると、ナトリウムが水面を走り回る。
  

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