赤い血!青い血? |
鉄(V)イオンとチオシアン酸イオンが形成する錯イオンの色は、一般に血赤色と表現される。また、鉄(V)イオンとヘキサシアノ鉄(U)酸イオンからは、ベルリン青と呼ばれる濃青色の沈殿が生じる。これら通常は試験管で行われる鉄(V)イオンの検出反応を、生徒に興味深く見せるための化学手品を紹介する。
(1)器具・試薬器具:ナイフ(ペーパーナイフ,バターナイフなど刃のないもの) | |
(2)準備 1) 溶液A 硝酸鉄(V)水溶液に硝酸を少し加え、ほぼ無色の水溶液をつくる。 中性洗剤を1滴加えて、シャーレに移す。 2) 溶液B チオシアン酸カリウム水溶液に中性洗剤を1滴加え、広口ビンに移す。 ビンにナイフを入れておく。 3) 溶液C ヘキサシアノ鉄(U)酸カリウム水溶液に中性洗剤を加え, 広口ビンに移す。 ナイフを入れておく。 4) 溶液D チオ硫酸ナトリウム水溶液を、大きめの脱脂綿に染みこませておく。 |
(1)楽しい授業展開
1) 「私は、超能力でケガを治療することができます。」
「まず、手のひらを消毒します。」
溶液Aを、脱脂綿に染みこませ左の手のひらに付着させる。
2) 「ナイフで手のひらを切ってみます」
手のひらに溶液Bをつけたナイフをあてて握り、切る真似をする。
手をひらくと、真っ赤な"血"が滴り落ちている。
3) 「皆さん、あわてないでください。これから、この傷を超能力で 治します。」
溶液Dをつけた脱脂綿に"念"をかける振りをした後で"傷口"をふき取る。
"傷口"が消え、脱脂綿からも"血"が消えてしまう。
4) 「こんどは、右手を切ってみます」
右の手のひらを1)2)のようにナイフで切る真似をする。
このとき、ナイフを溶液Cのものに代えておくと、青い"血"が滴る。
「あれ?」
説
2)で生成したチオシアン酸鉄の血赤色溶液は、3)でチオ硫酸ナトリウム水溶液により、Fe3+がFe2+に還元されるため、無色に変わる。この還元剤には、ビタミンCなどを用いてもよい。
・Fe3+の水溶液は、有色だと生徒に怪しまれる。硝酸鉄(V)水溶液に酸を加えることで、ほぼ無色の溶液を得る ことができる1)。
・水溶液に中性洗剤を加えておくと、皮膚やナイフの濡れが よくなり、付着した水溶液が目立たない。
1) 日本化学会編,化学実験虎の巻,丸善(1991),p.142 2) 左巻健男編,たのしくわかる化学実験事典,東京書籍,(1996),p.403 |