定番!化学実験
凝固点降下の測定

 短時間で、純水・非電解質水溶液・電解質溶液の凝固点測定ができる方法を紹介する。溶液を入れる容器にシリコーンチューブを用いた。これにより、溶液は少量で済み、短時間で教科書にあるような冷却曲線も得られる。

        実験の
準
備

(1)器具・試薬
ペン型温度計(精度±1℃、分解能0.1℃程度)*1
500mlビーカー
ガラス棒
シリコーンゴムチューブ(外径9mm内径7mm長さ135mm)
ホットメルト替えスティックφ7mm長さ2cm
駒込ピペット
ストップウオッチ
電子天秤
アイスピック(またはアイスクラッシャー)

食塩
ショ糖
飽和食塩水(ペットボトルに入れ冷凍庫で冷やしておく)
   測定容器 (2)測定容器の作り方
@ペン型温度計のセンサーの長さに合うようにシリコーンチューブをはさみで切る。
Aホットメルト替えスティックを長さ2cmにはさみで切り、切断面の中心部に釘で少しへこみをつける。
Bシリコーンチューブにホットメルト替えスティックで栓をする。
 ホットメルト替えスティックの中心につけたへこみは、温度計のセンサーの先端部が引っかかるようにして、容器の壁面に触れないようにするためである。

     実験操作

(1)溶液の準備

 教師が作って準備しておくと、時間は短縮できる。
1)0.50〔mol/s-H〕ショ糖水溶液
  水100gにショ糖17.0gを溶かす。
2)1.0〔mol/s-H〕ショ糖水溶液
  水100gにショ糖34.2gを溶かす。
3)1.0〔mol/s-H〕塩化ナトリウム水溶液
  水100gに塩化ナトリウム2.9gを溶かす。
(2)寒剤の準備
1)1〜2p角に砕いた氷を,500mlビーカーにほぼ一杯取り,水槽に入れ、食塩約100g(50mlビーカーに1杯程度)を加えてよくかき混ぜる。よく混ざったら、氷−食塩の寒剤を500mlビーカーに戻す。

2)冷却しておいた飽和食塩水をつぎ足す。

3)必要に応じて,氷と食塩をつぎ足す。

(3)溶液のセット

1)シリコーンゴムチューブの一端に、ホットメルト替えスティックで栓をする。

2)シリコーンゴムチューブ内に,ピペットを用いて,純水を深さ3p程度まで入れ,温度計を差し込む。温度計を差し込んだ状態で,液の深さが5p程度になるようにする。温度計の先端が容器の側面に触れないように注意する。

3)ガラス棒等で氷の間に隙間を作ってから,これを寒剤の中に差し込む。

4)温度表示が10℃まで下がったところから,10秒ごとに温度計の値を記録する。
●ひとりは時計係,10秒ごとに声をかける。
●ひとりは温度計を読む係…温度を読む合間に寒剤中の測定試料・シリコンゴムチューブを適度に回転させ,温度に偏りが生じないようにする。

(4)純水と溶液の測定
1)ガラス棒等で氷の間に隙間を作ってから,これを寒剤の中に差し込む。

2)温度表示が10℃まで下がったところから,10秒ごとに温度計の値を記録する。

●ひとりは時計係,10秒ごとに声をかける。
●ひとりは温度計を読む係…温度を読む合間に寒剤中の測定試料・シリコンゴムチューブを適度に回転させ,温度に偏りが生じないようにする。
3)過冷却状態か,凝固しているかどうか分からないときは,素早く取り出して確認する。凝固して,温度推移が定常状態になった後,2分間は温度追跡を続ける。

4)同様につぎの溶液の凝固点を測定する。
 A 0.50〔mol/s-H2O〕ショ糖水溶液
 B 1.0〔mol/s-H2O〕ショ糖水溶液
 C 0.50〔mol/s-H2O〕塩化ナトリウム水溶液
 一度使用した容器は、栓をはずし、水洗をして、チュー ブを振って水を切り、測定する溶液で共洗い後、使用す る。
 
(5)データの処理
1)温度変化の追跡データをグラフ上にプロットする。

2)グラフで,温度変化がほぼ平ら(やや右下がり)になっている線を左に延長する。

3)温度が下がってきた線との交点を凝固点とする。

 生徒がデータの処理するには案外時間がかかるので、パソコンが使用できるとよい。表計算ソフト(MicrosoftExcelなど)にあらかじめ枠を作っておき、データを打ち込めばすぐにグラフ化できるようにしておくと便利である。グラフをプリントアウト後、手で線を引き、凝固点を求めさせるとよい。グラフの目盛線を細かめにしておくと、正確に求められる。
(6)パソコンとの接続
 熱電対付きデジタルマルチメーターで、RS-232C出力をするものが市販されている。これをパソコンと接続し、MicrosoftExcelで、小さなマクロを記述すれば、測定データを取り込み、グラフ化することができる。
  

       成功のコツ

 ・ 溶液の量が少ないので、容器は共洗いをする。

 ・ 温度計の先端が、
容器の壁面につかないようにする。

 ・
 寒剤を強くしすぎない。強くしすぎると凝固点がわからなくなる。

 ・ 
攪拌が大切。シリコーンチューブをくるくる回転させる
   

       参考文献

 1) 鮫島実三郎,物理化学実験法増補版,裳華房,p.206(1982)
 2) 日本化学会,化学便覧基礎編改訂3版,丸善,U−p.154(1984)
 3) 化学教育研究会,授業に役立つ化学実験の工夫,大日本図書,p.20(1992)



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