気体の状態方程式を使わない分子量測定1 |
現行の化学Tでは,気体の状態方程式を学習しなくなった。生徒には,分子量測定が机上論になりがちである。そこで,生徒に分子量を実感させるための,気体の状態方程式を用いない,分子量測定方法を紹介する。
(1)器具・試薬器具: | |
*1 三方コックをつけたゴム栓をポリ袋につけておくと,試料気体を採りやすい。 | |
押し込み型 気体分子量測定器の作り方 |
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1)ストッパーとピストンの底部を補強する部分が引っかかるので,ピストンの一部を図1のようにカッターで切り取る。 |
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2)シリンダーのフランジ部分にストッパー固定用の穴(3mm)を開ける。ピストンを付け,アクリル板をねじで固定する(図2)。 |
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3)7号ゴム栓の縁に近い方(三方コックのレーバーをまわすため)に3mmの穴を開け,その穴に三方コックを取り付ける。 |
(1)風袋の測定
1)測定器を天秤にのせ、目盛りを0.00とする。
(2)空気の質量測定 2)図のように三方コックを操作しながら、また、ピストンはいつもストッパーまで引くようにしながら、空気を4回(約240 ml)、ボトルに押し込み、装置の質量を測定する。
気温20 ℃付近では目盛りが 0.29 gを示す。
目盛りが0.29からずれていれば、注射器に付けたストッパーを調節して、再度操作し0.29を示すようにする。
ストッパーは、注入気体をちょうど 0.01 molにするアジャスターの役割。
(3)試料気体の分子量測定
3) 2)で押し込んだ空気を抜きボトルを天秤にのせ、目盛りを再度0.00にする。
あらかじめ、ポリ袋に取った試料気体を装置の三方コックにつなぎ、2)で空気が0.29を示したときと同じ体積の試料気体をボトルに押し込む。
これを天秤にのせると、目盛りは試料気体の0.01 molの質量を表示する。つまり、分子量の1/100の値が表示される。
説
同温・同圧・同体積の気体には同数の分子が存在しているので、そのときの質量比は、分子量の比と等しくなる。同温・同圧下で同体積の気体の質量を測定し、基準となる気体の分子量がわかっていれば、未知の気体の分子量が測定できる。この実験では,空気を基準として,気体の分子量を測定する。空気の組成を窒素80%酸素20%とすると,空気の見かけの分子量は,次のようになる。(原子量:N=14,O=16)
14×2×0.80+16×2×0.20=29 空気の見かけの分子量を29として,分子量を測定する。
化学の学習初期の実験では、未習内容を含まず、かつ、目的の内容を印象的に理解させたい。本法は、気体の分子量を簡単・正確に測定することで、アボガドロの法則と原子量を用いた計算の有効性を実感させる効果がある。
この実験はこの手順通りに行えば、原理を理解しない生徒でも簡単に分子量が求められる。それゆえ、逆に「なぜ求まるか」の丁寧な説明は不可欠である。
・ 天秤の値が大切。風や振動に注意。
・ 基準になる空気の質量測定は正確に。
このページのもとは,山本進一,化学と教育,49.304(2001) 1)山本進一,化学と教育,48(11),760(2000) 2)教師のためのケミカルデモンストレーション3、池本勲訳,丸善,p41 または 盛口襄,「いきいき化学明日 を拓く夢実験」,新生出版,p.40(1994) |