定番!化学実験
気体の状態方程式を用いない分子量測定3
 蒸発しやすい液体の分子量測定を紹介する。

        実験の
原 理


1) WS1

2) WB1

3)CO2吹き込み

4)WS2

5)WB2
(1)実験原理の確認のために
次のような方法で二酸化炭素の分子量を測定できる。

1)CO2スプレー缶に付属のストローを2本つなげて付け、質量を測定する(WS1)。

2)PETボトルの質量を測定する(WB1)。

3)適当量のCO2をスプレー缶からPETボトル内に静かに噴き出す。

4)CO2スプレー缶の質量を測定する(WS2)。

5)PETボトルの質量を測定する(WB2)。

(2)結果とその処理
1)ボトルの質量増加(ΔWB=WB2−WB1)は、
  スプレーを出たCO2の質量(WCO2=WS1−WS2)より小さい。

 これは、「CO2がボトルから同圧・同体積の空気を追い出したから」と考えてよい。

2)WCO2−ΔWBがその空気の質量であり、CO2と空気との同圧・同体積の質量の比は、WCO2:(WCO2−ΔWB)。
 温度も等しいと見なし、空気の平均分子量を29、CO2の分子量をMとすると、

 M :29 = WCO2:(WCO2−ΔWB)

 なお、ボトルに栓をしなくてもWB2はしばらく変化せず、拡散速度が遅いことがわかる。
  

        実験の
準
備

(1)器具・試薬
試薬:
  ジエチルエーテル

器具:
  電子天秤最小目盛0.0001g
  注射針を取り付けた500 mL PETボトル*1
  ろ紙
  2.5 mL 注射器
  ポリ袋
*1
注射針はそのままだと危険なので,グラインダーなどで針先を丸めておく。

     実験操作

(1)実験前の質量測定

1)注射針を取り付けた500 mL PETボトルの底にろ紙をしき、2.5 mL 注射器とポリ袋を取り付け,天秤にのせて質量表示0.00とする。
(2)エーテルを蒸発させて質量測定
2)2.5 mL注射器をはずし,ジエチルエーテルを約0.5 mL入れ、PETボトルに再び付け,全体の質量を測定する(W1)。

3)注射器のピストンを押し,エーテルをろ紙上にこぼし,ピストンは同じ位置まで戻す。30秒ごとに質量測定する。

4)数分でビーカーの質量減少がほとんど止まるので、質量を記録する(W2)。



(3)結果処理
5)
W1は、ジエチルエーテルの質量である。
蒸発することで(W1−W2)の空気を追い出したことになる。

ジエチルエーテルの質量: W

追い出された空気の質量: W1−W

空気の平均分子量を29とし、ジエチルエーテルの分子量をMとすると、
     M:29=W1:(W1−W2)
で求まる。
 
  

       解

  液体の蒸発により空気が追い出され,その質量変化から分子量を測定する実験である。エーテルの蒸気は拡散が遅く,PETボトルの外にはなかなか出てこない。
  実験のどの値をつかえば,空気,エーテルの質量を求めることができるのか,生徒に理解させたい。
   

       成功のコツ

 ・ CO2の吹き込みは,できるだけ静かに。

 ・ 液体の蒸発には空間が必要である。注射器のピストンを元の位置に直すのを忘れないように。
   

       参考文献

 1)山本進一,"状態方程式を用いない気体の分子量測定",化学と教育,48,760(2000)
 2)山本進一,"押し込み型気体の分子量測定装置",化学と教育,49,304(2001)
 3)山本進一,"空気中の浮力を利用した気体の分子量測定",東レ理科教育賞受賞作品集,31,13(1999)
 4)岸田功,"アボガドロの法則を使った分子量測定",都理化研究発表集録,44,34(2004)



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