定番!化学実験
黒板貼付け型ダニエル電池

  電池の学習では、正極・負極の活物質(酸化剤、還元剤)と電子の移動をしっかりと理解させたい。図のみで電池の説明をすると、何が活物質であるのか、どこからどこへ電子が移動するのかを理解しづらい。黒板に実物の電池を貼り付けて説明すると、生徒は実感でき、理解を深めることができる。隔膜に透析用セルロースチューブを用いたので、溶液の混合があまり無く溶液は再使用できる。

        実験の
準
備

(1)器具・試薬
カードケース(A5サイズ)、
磁石シート(白、200×300mm、800円)
50ml注射器、
10ml注射器、
透析用セルロースチューブ(以下チューブ)(三光純薬30/20、長さ300mm)、
亜鉛板30×150mm、
銅板30×150mm(角を丸めておく)、
炭素棒φ5mm、
1mol/l硫酸銅(U)水溶液10ml*1、
0.1mol/l硫酸亜鉛水溶液50ml、
磁石付き目玉クリップ、
ソーラーモーター(プロペラ付き)*2
電池セルの作り方
 カードケースの中には、溶液が漏れるものがある。カードケースの端や角の接着状態をよく見て、漏れそうにないものを選ぶ。
 磁石シート(白)をカードケースと同じ大きさに切る。
 カードケースに磁石シートをスプレー糊か両面テープで貼り付ける。
 磁石シートは、白を使用する。白でないと、溶液の色が観察しにくい。
 *1 0.1mol/l水溶液でもモーターは回転するが、溶液の青色をはっきりと見せるため1mol/l水溶液を用いた。
 *2 電子ブザーも鳴るが、電子の移動を実感させるためにはモーターの方がよい。

     実験操作


(1)電池の組み立て

 1)チューブを水でふやかし、端を指で揉んで開く。チューブを2つに折り、純水を入れて満たす。銅板を注意深く入れ、水を捨てる。

 2)モーターを磁石付き目玉クリップではさみ、黒板に貼り付ける。

 3)黒板に、電池セルを貼り付ける。

 4)50ml注射器に硫酸亜鉛水溶液を50mlとり、電池セルに入れる。亜鉛板を電池セルに入れる。

 5) 1)のチューブを電池セルに入れる。チューブに硫酸銅水溶液10mlを注射器で入れる。
(2)モーターを回す。
 6)亜鉛板、モーター、銅板をリード線で結ぶと、モーターが回転する。
 7)銅板を抜いて、代わりに炭素棒をつける。モーターが回転し、数分すると炭素棒に銅が析出する*3
 *3 短時間で銅の析出を見せたいときは、炭素棒とチューブを重ねるとよい。内部抵抗が小さくなり大きな電流が流れる。
  

      解

 酸化剤、還元剤を学習した直後に、電池にかるくふれておくとよい。イオン化傾向を学習した直後に電池を学習すると、電池は電解質と2つの金属の組み合わせでできていると多くの生徒が思いこんでしまう。しかし、乾電池、最近流行の備長炭電池(空気電池)、鉛蓄電池では、1つの金属しか用いていない。そのため混乱を生じやすい。酸化剤還元剤の学習をしっかりと行った後に、電池は酸化剤と還元剤の組み合わせであることをしっかりと理解させたい。 黒板の実物に活物質、電子の流れを書き込むので、実感がわき説得力が増す。
 中学での電池は、「2種の金属板と電解液の組み合わせ」と扱っている。高校では、イオン化傾向の学習の直後に行い、電極に2種類の金属を用いた電池から学習を始める。そのため、電池には、2種類の金属が必要だと思いこんでいる生徒がいる。そこで、操作7)で銅板を抜き、代わりに炭素棒を入れ、何が活物質であるかを強調した。
   

       成功のコツ

 ・極板は、金だわしなどでみがいておく。
 ・極板間距離は、なるべく短く。
 ・ソーラーモーターを使う。確実に回転する。
   

       参考文献

 1) 化学教育研究会,授業に役立つ化学実験のくふう,大日本図書,p.127 (1992)
 2) 吉田工・妻木貴雄・吉本千秋・郡司幹夫,化学と教育,47(1),34 (1999)



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