定番!化学実験
黒板で赤ワインの蒸留

 演示実験の方法として,手軽で効果的な黒板化学実験1)2)3)を紹介する。
 黒板化学実験とは,試験管やビーカーなどの器具を磁石で黒板に貼りつけて行う実験のことである。教卓は意外と狭く装置が置きにくく,また,装置の位置が低くくなり,後方の生徒には見えにくく,演示実験には不向きなところがある。そこで,広くて高い位置にある黒板に装置を磁石で貼りつけて実験を行う,黒板を実験台とするような方法を考えた。この方法は,現象を観察しながら,同時に黒板に化学式や注意事項などを書いて説明することが可能になり,生徒にとって理解しやすくなる。
 黒板での蒸留について紹介する。

        実験の
準
備

(1)器具・試薬
器具:枝付き試験管,
    試験管,
    リービッヒ冷却器,
    ゴム栓,
    注射針(太さ22G),
    シリコン管(水の動きが見やすい),
    温度計,
    沸騰石,
    蒸発皿,
    磁石付き目玉クリップ,
    マグネットシート,
    定規,
    スポットフラム,
    マッチ,
    500mlPETボトル, 
    
試薬:赤ワイン
    青インク
(2)準備
  1. マグネットシートをPETボトルの大きさに切り,PETボトルにビニールテープでつける。もし,水を入れてずり落ちるようであれば,マグネットシートの面積を大きくする。
  2. マグネットシートをリービッヒ冷却器の大きさに切る。冷却器とマグネットシートの間に定規をはさみ込んで,ビニールテープを巻きつける。(定規をはさむのは,マグネットシートを歪ませないため)
  1. ゴム栓に穴をあけ,穴より径の一回り太いシリコン管を通し,リービッヒ冷却器つける。(シリコン管を通すには,シリコン管の端をひもでしばり,穴にひもを通してシリコン管を無理矢理ひきだす。常圧や加圧の場合,水が漏れることはない。4)
  2. ゴム栓に穴をあけ,シリコン管を通し,ゴム栓に,注射針を刺し,水を入れたPETボトルにつける。
 
  1. スポットフラムをマグネットシートにガムテープでとめて使用する。
  2. スポットフラムは炎が細く鋭いので,黒板は熱くならない。スポットフラムは広く加熱してから黒板に固定する。炎が鋭いので,ガラス器具が割れることがある。

     実験操作

(1)授業展開

1)蒸留装置を組み,枝付き試験管に赤ワインを入れる。(写真参照)

2)水の入ったPETボトルをひっくり返して,冷却水を流す。流量の調整は,PETボトルの高さを変えて行う。500mlのPETボトルで5分間くらい冷却水を流すことができる。

3)枝付き試験管を加熱する。液量が少ないので,短時間で蒸留ができる。



4)蒸留装置の注意すべき点などを,黒板に板書していく。試験管にある程度,留出物が集まったら,蒸発皿に移し,火をつけてみる。
  

     

       成功のコツ


 ・加熱は注意深くする。試験管が割れること,突沸を防ぐため。

 ・冷却水にインクで色をつけておくと水の流れがわかりやすい。

 ・冷却水を逆に流すと,逆に流してはいけない理由がわかりやすい。

   

       参考文献

 1) 中西啓二,科学の実験,20,165(1969).
 2) 中村好伸,東レ理科教育賞受賞作品集,p.7-11(1986).
 3) 化学専門委員会報告,東京都理化教育研究会研究発表収録(1998).
 4) 山本進一,東京都理化教育研究会研究発表収録P.38,31(1991)


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