ガラス細工　上級編　クリオネ風浮沈子

　ちょっと凝った遊び心のあるガラス細工として、水中を回転しながら浮遊する「クリオネ風回転浮沈子」を紹介する。
　「クリオネ風回転浮沈子」は少し器用な高校生が、練習すればできるはずである。
　　顔・腕や角をつけないのであれば、回転浮沈子は簡単にできる。
　　　　　　　　　　　　 　　　

	（１）器具・試薬 φ６mm軟質ガラス管、 ガスバーナー、 スポットフラム＊１ 羽根ヤスリ ピンセット マッチ
	＊１スポットフラム 　ブタンを燃料としたペンシル型バーナー。細い高温の炎が出る。先の折れた駒込ピペットや小さなヒビの入ったガラス器具の修理ができる。

１ ２ ３	（１）ガラス管からガラス棒をつくる １　適当な長さのガラス管を、内炎の頂点の少し上で回転させながら加熱する。 ２　回転させながら、やや押し気味に加熱を続けると、ガラス管の肉が寄り（この操作を肉寄せという）、やがてガラス管内の空気がなくなりガラス棒になる。ガラス管の直径と同じ太さくらいの棒状にする。 ３　炎から取り出して、ガラスの色を見ながら、ガラスを引いて直径１mmくらいのガラス棒にする。炎から取り出してすぐにガラスを引くと細くなりすぎてしまう。ガラスを引いてみて、抵抗がないときは引く速さを遅くする。 　　肉寄せをしたガラス管の細い部分はすぐに固化し、太い部分はゆっくりと固化するので、ガラスを引く速さが程良いと、均一な太さのガラス棒になる。
１ ２ ３ ４ ５	（２）頭をつくる １　長さ２０ｃｍくらいのガラス管の切り口を内炎の横に入れる。（下図�@参照）ガラス管の一端が閉じればよいので、ガラス管の端だけ炎の中に入れる。ガラス管を炎の中に突っ込みすぎないように注意する。 ２　回転させながら、十分に加熱すると肉が寄りガラス管が閉じる。 ３　炎から取り出して、下を向いて息を吹き入れ、少しふくらませる。 ４　内炎の頂点の少し上にガラス管を入れる。大きくふくらませるため、左図４のようにガラスを炎の中に入れる 　ガラス管を回転させながら十分に加熱し、肉を寄せる。 ５　肉が溜まったら、炎から取り出して、息を吹き入れ、ガラス管の直径の３倍くらいにふくらませる。大きくふくらまないときや肉薄になったときは、再び炎の中に入れ、融かして肉寄せをしてやり直す。
２ ３ ４ ５ ６	（３）顔をつくる。（本物のクリオネに顔のようなものはない） １　右手に直径１mmのガラス棒を取り、左手に頭をつくったガラス管を持つ。 ２　鼻にするところをスポットフラムであぶる。ガラスから黄色い炎が弱くでる程度にする。あぶりすぎると変形してしまう。同時並行で直径１mmのガラス棒を、鼻する分量だけ融かす。 ３　融けたら、ガラスを接触させ、鼻をつける。 ４　炎の中で、余分なガラスを切り離す。同様に目、口を付ける。 ５　顔の部品が付け終わったら、回転させながらガスバーナーの炎の中に入れ、少し縮む程度に融かす。 ６　息を吹き入れて、元の大きさにする。 　この作業により、顔の部品がなじみ、はがれにくくなる。
	（４）つのをつける。 　　（つのをつけるとPETボトルから取り出しやすくなる） 　顔を作るときと同様に、つのをつける。炎の中で引き延ばさずに、炎から取り出し、ガラス管を引いて、鋭いつのの形にする。余分なガラスは炎で焼き切る。
１ ２ ３ ４ ５ ６	（５）腕をつける。 １　顔を作るときと同様に、腕をつける。特にこの部分は、割れやすいので腕をつける前にスポットフラムであぶる作業を怠らないこと。 ２　１mmのガラス棒を押しつけたら、少し引っ張る。 ３　余計なガラス棒は、炎の中で焼き切る。反対の腕も同様に付ける ４　両腕がついたら、曲げたい部分にスポットフラムの炎にわずかな時間あて、ピンセットで形を整える。ペットボトルの口のサイズを考えて、腕を細工すること。 ５　バーナーの空気ねじを閉じて黄色い炎にし、ガラス全体にすすがつくまで炎の中に入れる。この操作は「除歪」である。これをしないと、後日ガラスが割れてしまうことがある。 ６　放冷する。このとき、机などに直に置いてはならない。加熱した部分を空中に保持できるように置く。
１ ２ ３ ４	（６）しっぽを加工する。 １　頭の部分が持てるくらいに冷えたら、しっぽにする部分をバーナー加熱し、ある程度肉寄せをする。（手と炎の距離が近いので熱いが、我慢をして作業する）肉寄せができない状態で、ガラス管を引くと、肉薄になり、管が塞がりやすくなる。 ２　炎から取り出し、ガラスを引いて直径１．５mmくらいにする。 ３　ヤスリでガラスに傷をつけ、不要なガラスを切る。（しっぽの長さは、胴体と同じくらいがよい） ４　スポットフラムでわずかに加熱し、しっぽをピンセットで曲げる。まず、背中の方に曲げ、次に胴体に巻き付くように曲げ、後端が真横を向くようにする。一気に曲げようとせずに、慎重に気長にやった方がよい。また、加熱しすぎると管が塞がってしまう。加熱不足はやり直しできるが、加熱しすぎはやり直しがきかない。 ５　放冷して完成。 シッポの曲げ方の細かい説明 　まず、シッポと胴体の境を９０°に曲げる。 １８０°まで一気に曲げると、折れて塞がってしまう可能性がある。曲げた部分から２mm位ずらして加熱し、さらに９０°曲げて１８０°にする。シッポ部分は細いので、４５°に曲げ、加熱位置をずらしてさらに４５°曲げてシッポを横向きにする。残りのシッポを慎重に加熱して(絶対に加熱しすぎない)、胴体に巻き付ける。
	（７）浮沈子の使い方 １　できあがった浮沈子を十分に放冷する。 ２炭酸飲料用PETボトルに水を満たし、浮沈子を入れる。 ３　ペットボトルを握ると、浮沈子が沈む。握る力を緩めると、浮沈子の中に入った水が噴き出し、その勢いで浮沈子が回転する。握る力をうまく調整すると、PETボトルの中心で回転し続けることができる。

　　

　　　　　　　説

浮沈子は、外圧が高くなると、浮沈子の中に水が入り込み沈み、外圧が低くなると、浮沈子から水が出て浮く。浮沈子の噴出口を横に向けておくと、水が横向き噴き出すので回転しながら浮く。YPCの市江氏のドイツ土産の浮沈子を参考に、この浮沈子を製作した。 　クリオネ風回転浮沈子の製作は、クラブや化学好きの生徒向けである。授業では難しすぎて不可能。難しいだけに完成したときの達成感は、相当なもののようである。 　肉寄せは、ガラス細工でよく使う操作なので確実に習得したい。また，この操作が確実にできるようであれば，そのほかの操作も上手にできるようになる。

　　　

・　いきなり炎にガラスを入れない。（予熱となましを怠らない。） 　・　ひつこく細工をしない。（無駄な修正は、失敗のもと） 　・　炎のどの位置にガラスを入れるか。（ガラスのどこを融かすか） 　・　あきらめない。（何回失敗してもやり直す）

　　　

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