試薬の少量化 |
学校5日制,総合学習の時間,教科情報の導入などで,化学の授業時数の確保が難しくなっている。しかし,このような状況下でも実験は大切である。短時間で効率よく実験をしたい。そのための実験室の整備方法を,ここでは紹介する。
今回は少量化について紹介する。
少量の試薬で実験を行えば,反応時間も短く,片付け等が簡単になり,短時間で実験を終了できるようになる。また環境への配慮,低予算化にも対応できるようになる。
(1)器具・試薬器具: |
説
(1)溶液の量
1)ほとんどの実験で溶液の使用量は数滴か1mlである。
2)試薬を加えていっても,試験管の1/5を超えない量で実験を行うようにしている(例外あり)。
3)確実に反応が起こり,16.5φの試験管のなかで現象が確認できる最小量で実験を行うべきである。
4)試薬の量が少なければ,万が一ときでも被害を小さくすることができる。
5)試験管ではなく,反応呈色皿の上で実験をすれば,さらに少量化できる。しかし,現象が小さすぎて高校生には,実感や感動がわきにくい。高校生には,試験管での観察が適当であろう。
(2)固体試薬の量
1)粉末の試薬は耳かき1杯,小さじ1杯,1gが主である。
金属板などは,2mm×2mmや5mm×5mmが主である。
2)たとえば,塩素の実験では,さらし粉ミクロスパチュラ1杯を試験管にとり,塩素発生させ,注射器に吸いとって性質を調べる実験をしている。
この程度の量であれば,ドラフトも必要なく,換気に注意する程度で実験ができる(グリーンケミストリーでは,このような方法も良くないのであろうが)。
3)熱濃硫酸の実験では,濃硫酸1mlに銅板2mm×2mmで行っている。銅板は短時間で溶けきる。この程度の量でも白色の硫酸銅(U)の沈殿は確認でき,注意深く水を加えれば,沈殿が溶解し水色の溶液になることも観察できる。
(3)安全への配慮
1)使用量が非常に少量なので結果として経済的になる。
2)少量とはいえ,危険はつきものである。
3)安全めがねは生徒数分以上そろえたい。実験室の入口付近においてある。めがねをかける癖をつけさせたい。
4)フェノール等の危険な薬品を扱うときは,使い捨ての手袋をさせている。
1)塚越博,化学教育,41,508(1993). |