水素の性質を実感する実験2題 |
無機化学分野の導入として、水素の拡散(分子運動)の速さや爆発条件について演示する、インパクトのある実験2題を紹介する。
(1)器具・試薬(実験1)ポリ塩化ビニル管(外径7mm、内径5mm) |
(1)水素の拡散1)2)
1) 図のような実験装置を組み立てる。
ビーカーの水には、アンモニア水を少量加え、フェノールフタレイン
溶液を滴下して、赤色に着色しておく。
2) 1人の生徒に、図のAから水を吸い上げてもらう。
その様子から、他の生徒に水を吸い上げる力の大きさ
を推測させる。
3) 壺に水素を吹き込み、ただちにゴム栓をする。
4) 赤い水柱が塩ビ管を登り、約2mの高さに達する。その後は、ゆっくりと下がってくる。
解説 この現象は、素焼き容器を通して外部へ逃げる水素分子の拡散速度が、外部から容器内へ侵入する空気(窒素分子や酸素分子)のそれより大きいために、容器内が一時負圧になることで生じる。
この実験から、水素の分子量が小さいことを、間接的に理解できる。この素焼き容器を用いた水素の拡散実験は、従来多くの実験書で取り上げられてきた4)。しかし、桜井らが紹介した壺(徳利)を用いる方法1)2)は、実験装置が簡単で、手軽に演示することができる。
(2)水素の爆発3) 5) 1Lペットボトルの底を切り、右図の装置をつくる。
6) 水上置換か上方置換でペットボトルに水素を満たす(空気の混入に注意)。
7) ペットボトルを片手で持ち、ゴムキャップをはずし、直ちに点火する。
8) 点火直後は、見えにくい薄い色の炎で燃焼している。しばらくするとガラス管のナトリウムによる炎色が見えるようになり、「プー」という音がした後に爆発する。
解説
この実験では、次の3つのことを生徒に理解させることができる。
1.上のガラス管で燃焼を続けることから,水素が空気より密度の小さな気体である。
2. 点火後すぐには爆発しないことから、水素の爆発には、酸素との混合が必要である。
3. 爆発後水蒸気でペットボトルくもることから,水素の燃焼後には水が生成する。
・実験1の水素は、必ず水素ボンベを用いる。金属と酸の反応によって発生させていては、時間がかかりすぎる。
・実験2で、水素への点火はそれほどあせらなくてよいが、 ゴムキャップをとったら手早く点火する。
1) 桜井正之ほか,化学と教育,43,122 (1995). 2) 桜井正之,平成11年度東レ理科教育賞受賞作品集,31,p.42〜43 (1999). 3) 藤木源吾,化学講義実験法,共立出版,p.60〜61 (1950) 4) たとえば、赤堀四郎・木村健二郎監修,増訂化学実験事典,p.25 講談社 (1973). |